
物件確認システムの普及が、リーシング業務にもたらした変化とは
2026.07.03
物件確認システムの普及は、リーシング業務を大きく変えました。本コラムでは、定型コミュニケーションと価値あるコミュニケーションという視点から、システムと人の役割分担を考察します。
01コミュニケーションの質を見直す時代へ
物件確認システム、内見予約システム、電子申込システムなど、リーシング業務を支えるさまざまなシステムが普及したことで、賃貸管理業界の業務はこの十数年で大きく変化しました。
仲介会社は営業時間に左右されることなく空室情報を確認し、そのまま内見予約や申込まで進められるようになりました。管理会社にとっても、定型的な問い合わせへの対応時間が減り、本来の業務へ時間を充てやすくなっています。
この変化は、賃貸管理業界におけるDXを象徴する出来事の一つと言えるでしょう。
AAAコンサルティングでも、このようなシステムの活用は積極的に推奨しています。人が対応する必要のない業務はシステムへ委ね、人は人にしかできない業務へ集中する。この考え方は、今後のリーシング業務においてますます重要になると考えています。
一方で、現場を見ていると感じることがあります。
システムによって変わったのは業務フローだけではありません。
コミュニケーションのあり方そのものが、少しずつ変化しているように感じます。
02電話対応の負担は、「通話時間」だけでは測れない
リーシング業務に携わる方であれば、「物件確認の電話が多くて仕事が進まない」という話を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、冷静に考えてみると、一件の電話は数十秒、長くても数分程度です。
時間だけを見れば、それほど大きな負担ではありません。
では、何が負担だったのでしょうか。
管理会社の担当者は、電話を待ちながら仕事をしているわけではありません。
募集図面を作成し、申込内容を確認し、契約書類をチェックし、基幹システムへデータを登録し、オーナーへ募集状況を報告し、メールを返信する。こうした業務の多くは、一定の集中力を必要とします。
その途中で電話が鳴ります。
作業を止め、頭を切り替え、問い合わせに対応し、電話を終えた後には、再び元の業務へ戻らなければなりません。
その際、多くの担当者が経験するのは、
「どこまで確認しただろう。」
「この書類はチェック済みだっただろうか。」
「入力途中だった項目は何だったか。」
という、思考の組み立て直しです。
人は機械ではありません。
一度中断した思考は、ボタン一つで元に戻るものではありません。
電話による負担は、通話時間だけではなく、その前後に発生する認知の切り替えまで含めて考える必要があります。
こうした視点で見ると、物件確認システムが歓迎された理由は、「電話を減らしたかったから」というよりも、「集中して業務を進められる時間を確保したかったから」と考えることもできるでしょう。
03仲介会社にも、電話をかける理由がある
もちろん、仲介会社にも事情があります。
目の前には部屋探しをしているお客様がおり、その場で契約成立へ近づけるための情報が必要になります。
「初期費用は相談できますか。」
「入居日は調整できますか。」
「オーナーへ確認していただくことはできますか。」
「他にも条件の近い物件はありますか。」
管理会社から見ると募集条件に記載されている内容であっても、お客様へ正確に説明するために改めて確認したい場面もあります。
また、「今、管理会社へ確認しています」という行為そのものが、お客様へ安心感を与えることもあります。
もちろん、募集条件を十分確認せずに電話をかけてしまうケースや、難しい条件交渉が行われるケースもあるでしょう。
しかし、その背景にあるのは、少しでも契約成立の可能性を高めたいという思いです。
管理会社も、仲介会社も、目指している方向は同じです。
一日でも早く空室を埋め、オーナーへ成果を届けること。
本来、両者は対立する関係ではなく、同じ目的に向かうパートナーと言えるでしょう。
04システムが置き換えたのは、「電話」ではなく「定型的なコミュニケーション」
物件確認システムや内見予約システムが急速に普及した背景には、このような双方の事情がありました。
空室確認。
内見予約。
申込方法の案内。
こうした内容は、システムによる提供との相性が非常に良い情報です。
いつ確認しても同じ結果が返り、24時間利用でき、伝達ミスも起こりにくい。
人が電話で対応するよりも、システムの方が優れている場面も少なくありません。
このように考えると、システムが置き換えたのは電話という手段ではなく、電話で行う必要のなかった定型的なコミュニケーションだったと言えるでしょう。
これは、リーシング業務における大きな前進です。
05一方で、システムだけでは完結しないコミュニケーションもある
しかし、リーシング業務には、定型化しにくいコミュニケーションも存在します。
例えば、
「このお客様であれば、オーナーへ条件交渉をご相談いただく価値はありそうでしょうか。」
「この条件では難しいですが、近隣でご紹介できそうな物件があります。」
「今回の事情であれば、このようなご提案もできるかもしれません。」
こうしたやり取りには、募集条件だけでは判断できない情報が含まれています。
管理会社ごとの運用方針、オーナーとの関係性、市場動向、担当者の経験、そして相手との信頼関係。
さまざまな要素を踏まえながら、その場で判断し、提案する必要があります。
リーシング業務の本質は、情報を伝えることだけではありません。
契約成立へ向けて、人と人が協力しながら最適な選択肢を探していくことにもあります。
そのようなコミュニケーションは、今後も人が担う重要な役割であり続けるのではないでしょうか。
06コミュニケーションには、「コスト」と「価値」がある
ここで改めて考えたいのは、コミュニケーションそのものを減らすことが目的ではないという点です。
定型的な確認業務は、システムへ置き換えることで大きな効果を生みます。
一方で、契約成立につながる相談や提案、状況に応じた判断は、リーシング業務において大きな価値を持つコミュニケーションです。
前者は、できる限り効率化した方がよいでしょう。
後者は、むしろ時間をかける価値があります。
言い換えれば、減らすべきなのはコミュニケーションそのものではなく、価値を生まない定型的なコミュニケーションです。
そして、そこで生まれた時間を、契約成立へつながるコミュニケーションへ振り向けることが、リーシング業務全体の品質向上につながるのではないでしょうか。
07システムとBPOは、それぞれ異なる価値を担っている
このような視点で見ると、システムとBPOは競争する存在ではありません。
システムは、定型的なコミュニケーションを効率化する役割を担います。
一方でBPOは、システムでは判断しにくい相談や状況に応じた対応、人だからこそ提供できるコミュニケーションを支える役割を担います。
それぞれ得意とする領域が異なるからこそ、両者を組み合わせることで、リーシング業務全体の品質はさらに高められると考えられます。
システムによって生まれた時間を、人がより価値の高いコミュニケーションへ活用する。
この考え方こそが、これからのリーシング業務において重要な視点ではないでしょうか。
リーシング業務の目的は、電話を減らすことでも、システムを導入することでもありません。
空室を一日でも早く埋め、オーナーの資産価値向上に貢献し、仲介会社が提案しやすい環境を整え、お客様へより良い住まいを届けることです。
その目的を実現するために、システムと人、それぞれの強みをどのように活かしていくか。
今後のリーシング業務では、その視点がますます重要になっていくものと考えています。
